第三のデュガ!?ブルゴーニュの大注目生産者『ドメーヌ・アンベール・フレール』とは

ブルゴーニュワインは、フランス東部のブルゴーニュ地方で造られるワイン。ボルドーと並ぶフランスの2大ワイン生産地のひとつとして知られており、かの有名な最高級ワイン「ロマネ・コンティ」を産出する地域でもあります。

ブルゴーニュワインの特徴は、2つの主要な品種から造られることです。赤ワインは「ピノ・ノワール」、白ワインは「シャルドネ」、基本的にはこれらの単一品種でワインが造られますが、その味わいは千差万別。同じ品種であっても、生産者、ブドウ畑ごとの土壌や気候条件(テロワール)の違いによって大きく味わいは異なります。隣り合った畑であっても、テロワールが違えば、まったく異なるワインに仕上がることも。

単一品種で造られるからこそ、生産者やテロワールによって個性が顕著に現れるという面白さがあるのがブルゴーニュワインの魅力の一つです。

世界中のワインラバーが愛してやまないブルゴーニュワインですが、現在価格高騰中。ここ数年で市場価格が2倍以上にもなっています。

価格高騰が続くブルゴーニュワイン

理由はいくつかありますが、

・近年の品質向上および気候変動による生産量減

・2021ヴィンテージの記録的な不作

・有名銘柄の投機対象化

などが挙げられます。

栽培・醸造技術の進歩により、もはやバッドヴィンテージは存在しないと謳われるほど、ブルゴーニュワインの品質は向上しています。そのような造り手の努力に反し、地球温暖化による気候変動や異常気象(雹、春の遅霜、気温40℃を超えるような熱波)の影響により、生産量の減少が続いています。そして、常態的な品薄状況に拍車をかけたのが2021ヴィンテージの記録的な不作。4月に過去に類を見ないほどの霜の被害を受け、ブルゴーニュ全体で、例年に対して生産量が半減しました。特に小規模な造り手にとっては死活問題で、生産量減=収入減を見込んだ造り手たちは、十分な生産量のあった2019、2020ヴィンテージから大幅に出荷価格を上げざるを得ませんでした。

これらに加えて、ブルゴーニュが他の生産地に比べて異常な価格高騰を見せているのは、投機対象としても人気を高めているから。ワイン愛好家だけでなく、投資家たちにも目を付けられたブルゴーニュワイン、特に有名生産者の希少銘柄は、需要が需要を呼ぶまさにバブル状態。そのあおりを受け、ブルゴーニュワイン全体が異常な高騰を見せています。

ブルゴーニュの超名門!デュガ家とは

デュガ家は、フランス・ブルゴーニュを代表するワイン生産者の一族。ナポレオンが愛したという逸話から「王のワイン」とも呼ばれるワインを生み出す、ジュヴレ・シャンベルタン村に本拠地を構えています。

現在、デュガ家の系譜を継ぐドメーヌは『デュガ・ピィ』、『クロード・デュガ』そして『アンベール・フレール』の3つ。彼らは伝統的な手法を重んじながらも、テロワールの豊かな表現を重視し、個々の畑の特性を最大限に引き出すことで知られています。力強くて芳醇でありながら、繊細さも持ち合わせるその偉大なピノ・ノワールは世界的に高く評価されています。

所有する畑はいずれも極小で、生産量も少なく、ブルゴーニュ愛好家垂涎の入手困難な造り手の代表格となっています。

第三のデュガ!『アンベール・フレール』

『デュガ・ピィ』、『クロード・デュガ』のいとこにあたる、エマニュエルとその兄フレデリックの2人が運営するドメーヌ。すでにブルゴーニュを代表するスター生産者である彼らほどの知名度はありませんが、近年、『アンベール・フレール』のワインはフランスのジャーナリストの間でも非常に評価が高く、ジュヴレ・シャンベルタンの偉大な生産者の仲間入りをしたと言われています。

母親テレーズがデュガの家系。結婚のためアンベール姓となっている。

デュガ家共通の優良畑を所有

特級畑「シャルム・シャンベルタン」や一級畑「クレピヨ」等、デュガ家と共通の優良畑など、ジュヴレ・シャンベルタン村を中心に計25の区画を所有。樹齢は最大95年以上にも及ぶものもあります。

徹底した収量制限と有機農法による自然な栽培

『デュガ・ピィ』や『クロード・デュガ』と共通の哲学を持ち、一族で代々受け継がれてきた古樹の使用、有機農法による栽培、野生酵母による醸造、瓶詰めの際に清澄・濾過をしないなど、ナチュラルで伝統的なワイン造りを行っています。ほかのデュガと同じくパワフルでしっかりとした構造のあるスタイルですが、「収量を抑えてブドウの状態が良ければ抽出を強くする必要はない」という考えのもと、極限まで収量を落とした上で果粒の小さなブドウを使用し、ピジャージュを行わずに繊細に抽出を行うため、より一段とエレガントさが際立っています。

フランス国内で高い評価を獲得

生産量が少なく、そのほとんどがフランス国内で消費されるため、日本での知名度はあまり高くありませんが、フランス国内のワイン愛好家やソムリエからの人気は絶大。フランスで多大な影響力を持つワイン評価誌であるベタンヌ&ドゥソーヴ誌の2022年版では満点の5つ星(ルロワやDRCなど)に次ぐ4つ星を獲得するなど、隠れた第3のデュガとしてフランス国内で高い評価と人気を獲得しています。

まだ見ぬ優良生産者を見つけよう

有名生産者については入手自体が難しくなっているブルゴーニュワインですが、まだまだ知られていない素晴らしい生産者たちが数多く存在します。『アンベール・フレール』もその内のひとつですが、フランスや世界中では評価されている「日本人だけが知らないブルゴーニュ」を探してみてはいかがでしょうか?