全日本最優秀ソムリエの阿部誠氏に聞く、「シャンパーニュの泡の秘密」

全日本最優秀ソムリエコンクール第三回大会優勝、卓越した技能者「現代の名工」受賞など輝かしい実績を持ち、現在はシャンパーニュ『パルメ』のブランドアンバサダーを務める、シャンパーニュのスペシャリスト、阿部誠氏によるシャンパーニュコラム第4弾!

今回は「シャンパーニュの泡の秘密」について解説していただきます。

シャンパーニュの泡の極意「ティラージュ」

阿部さん

シャンパーニュの「泡」を造る工程で、まさに極意と言っても過言ではないのが「Tirage」(ティラージュ)という作業です。ボトリングの際、ベースのスティル(非発泡性)ワインに同時に酵母と糖分も一緒に瓶に詰めます。詳しく言うと白ワインと酵母、糖分を混ぜた液体を加えるのですが、この液体のことを「Liqueur de Tirage」(リキュール・ド・ティラージュ)と言います。これによって瓶内でさらなるアルコール発酵が起き、炭酸ガスが発生します。

TIPS…アルコール発酵では、酵母が働きかけ、糖分をアルコールと炭酸ガスに変化させます。

泡を生む作業が「ティラージュ」、それに使われる液体が「リキュール・ド・ティラージュ」ですね!

シャンパーニュのベースはスティル(非発泡性)ワイン

阿部さん

ここで重要なのはこの時点でベースになるのは非発泡性のスティルワインであるという事です。まず、収穫されたブドウはプレス機に運ばれて、圧搾され、果汁が搾られます。さらに、この果汁をアルコール発酵やマロラクティック発酵を施してワインを造ります。これを「Vin Clair」(ヴァン・クレール)と言います。

マロラクティック発酵…乳酸菌がワインのリンゴ酸を、乳酸と炭酸ガスに分解する発酵のこと。
「Vin Clair」(ヴァン・クレール)…フランス語で「クリアな(澄んだ)ワイン」を意味。

まずは泡の無いワインを造るんですね

阿部さん

はい、このヴァン・クレールは品種や畑ごとに醸造されて、発酵後もそれが何であるか分かるように管理がされ、その後、醸造責任者を中心にした醸造チームのメンバーで、そのメゾンのスタイルに合わせて過去のワインなどともアッサンブラージュ(ブレンド)がされてベースのスティルワインが出来上がります。こちらの写真はシャンパーニュ・パルメのワイナリーのものですが、このようなステンレスタンクにベースのワインが保存されているんですよ。

へぇ~、近代的!

キーワードは「瓶内二次発酵」

阿部さん

瓶にワインとリキュール・ド・ティラージュを詰めた後は、一般的には王冠で密栓を行いますが、アイテムによってはコルクと留金を使用する場合もあります。ティラージュによって発生した炭酸ガスは密閉された瓶内では逃げ場がないので瓶内のワインに溶け込みます。この時にリキュール・ド・ティラージュの糖分が発酵によりアルコールに代わり、約1.5%上昇します。この工程を「瓶内二次発酵」や「トラディショナル方式」、「シャンパーニュ方式」などと言います。

まさに「瓶内二次発酵」ですね!シャンパーニュ方式という言葉もよく見かけます。

王冠で栓がされ、瓶を横に寝かせて熟成されます。
コルクと留金を使用する場合も。

阿部さん

その後は、ボトルを水平にして暗くて涼しい熟成庫に保管され熟成がなされます。熟成期間も定められており、年号表記にないもので最低15ヶ月以上、年号表記のあるもので36ヶ月以上となっています。一般的には多くのメゾンではこの規定以上の熟成がなされています。

ティラージュの効果は泡を生み出すだけではない?

阿部さん

この長期間の熟成により、ティラ―ジュの際に入れた酵母が発酵の活動を終えた後に澱となり、自己分解を起こしてアミノ酸を放出します。これらがワインの中に溶け込む事で香りが複雑になり、旨味を増します。そして熟成期間が長いほどに泡のキメが細やかになり持続性のある泡立ちとなるのです。

次回第5回のコラムでは「シャンパーニュを熟成させる意味」について詳しく解説していただきます。こうご期待!

阿部誠さん
2002年、第3回全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝し、その後世界ソムリエコンクールの日本代表として出場。ホテル西洋銀座から、都内レストランの支配人兼シェフソムリエを経て、2004年に独立し、東京・銀座に「サロン・ド・シャンパーニュ・ヴィオニス」を開業。一般社団法人日本ソムリエ協会常務理事。2020年、卓越した技能者「現代の名工」受賞。