全日本最優秀ソムリエの阿部誠氏に聞く、「シャンパーニュの畑」

全日本最優秀ソムリエコンクール第三回大会優勝、卓越した技能者「現代の名工」受賞など輝かしい実績を持ち、現在はシャンパーニュ『パルメ』のブランドアンバサダーを務める、シャンパーニュのスペシャリスト、阿部誠氏によるシャンパーニュコラム第2弾!

今回は「シャンパーニュの畑」について解説していただきます。

シャンパーニュはフランスワイン産地の最北端

前回、シャンパーニュ地方はフランス北東部のランスという街を中心に広がるワイン生産地だと教えていただきましたが、地図を見るとかなり北の方にありますね。

阿部さん

シャンパーニュ地方はとても冷涼でワイン造りのブドウ栽培地としてはほぼ北限に位置します。ランスは北緯約49度なので緯度は日本の北海道よりもはるかに北です。

しかしながら冷涼で厳しい気候条件であるが故に酸度が高く、その豊富な酸によって長期間の熟成に耐え、複雑さのある風味となり、その酸味にきめ細やかな泡立ちが加わり、エレガントな味わいになるのです。

北海道よりも北!冷涼だからこそ、ブドウが成熟しても、しっかりとした酸が保たれるんですね。

シャンパーニュ地方、2つの気候条件

阿部さん

北限の産地ではありますが、シャンパーニュ地方のブドウ畑は大陸性気候海洋性気候の二つの影響を受けています。フランスの他のワイン産地では見られない、シャンパーニュ地方独特の特性です。

大陸性気候は日較差や年較差がハッキリとしており、冬は気温が急激に下がることもあります。 場所によっては-10℃以下にもなり、年によっては春先に霜の被害にあう可能性があります。 逆に夏は高温で、激しい雷雨に見舞われることもあります。

日較差…1日の最高気温と最低気温の差。
年較差…1年の最暖月平均気温と最寒月平均気温の差。

フランスの北に面する大西洋からの影響もあるということでしょうか。

阿部さん

はい、大西洋の暖流がもたらす海洋性気候の影響により、比較的温暖で、 冬は寒すぎず、夏は暑すぎず、降水量が多くなり、湿度は高く、秋からの気温の低下が穏やかに進みます。この二つの気候がもたらす程よい日照時間と降雨量が、酸味と糖度の絶妙なバランスを持ったブドウを生み出すのです。

大陸性気候と海洋性気候が入り混じった独特の気候が、シャンパーニュを特徴づけている一つの要因なんですね。

シャンパーニュ地方はかつて海に覆われていた!

阿部さん

シャンパーニュの畑で特徴的なのは、土壌が白いチョーク質であるという事です。大昔はこの辺り一体は海底でしたが地盤沈下や隆起などの変化により現在は陸地となっています。しかしながら海底部分であった部分が陸地になった事で貝などの海の生物がそのまま地中に残り、長い年月を経てチョーク(石灰岩)の土壌になったのです。

シャンパーニュの地下に広がる洞窟、天然の熟成庫「カーヴ」

阿部さん

このチョーク質の土壌は指で触ると湿気があり一見、脆く感じるのですが、ローマ時代にはこれらを採掘して橋などを建造していたとの事で実際にはかなり丈夫な土壌のようです。採掘後は洞窟となり、現在はシャンパーニュを熟成させる場所「カーヴ」として使われています。また、先の大戦時には防空壕としても使われており、戦前に造られたシャンパーニュなどをカーヴの奥深くに今現在も保管しているメゾンもあります。
2015年には、「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」はユネスコの世界文化遺産に登録されました。

中心となる3つの産地

阿部さん

シャンパーニュ地方の中で特に重要な産地は、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランの3つです。モンターニュ・ド・ランスは主にピノ・ノワールが栽培され、ヴァレ・ド・ラ・マルヌはムニエが、コート・デ・ブランではシャルドネが主に栽培されています。各メゾンでは多くのブドウ栽培農家と契約をしており、それぞれの産地のブドウをブレンドしてメゾンのスタイルに合ったシャンパーニュを造ります。

次回第3回のコラムでは「シャンパーニュのブドウ品種」について詳しく解説していただきます。こうご期待!

阿部誠さん
2002年、第3回全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝し、その後世界ソムリエコンクールの日本代表として出場。ホテル西洋銀座から、都内レストランの支配人兼シェフソムリエを経て、2004年に独立し、東京・銀座に「サロン・ド・シャンパーニュ・ヴィオニス」を開業。一般社団法人日本ソムリエ協会常務理事。2020年、卓越した技能者「現代の名工」受賞。